2014/08/14

【研究紹介13】2つの欺瞞:蟻に擬態したクモ(Peckhamima picata)は視覚的・化学的な手がかりを利用する捕食者の両方に捕まらない(PLoS One, 2013)

Abstract(ざっくり和訳)
特定の捕食者が知覚可能な異なる種類の手がかりごとに他の生物に擬態していることを強化するため、生物学的な擬態は多感覚であることがよくある。本研究では、少なくとも2つの捕食者を騙す新しい擬態について報告する。これらの擬態は捕食者の意思決定をするための異なる感覚モダリティに依存したものである。先行知見において、形態や行動を蟻に擬態したクモは、視覚的な手がかりを利用するハエトリクモに捕食されにくくなることが示された。本研究では、この蟻に擬態したクモは、化学的手がかりを利用しているクモを捕食するジガバチや、擬態している蟻からの攻撃を低下させていることを示した。また、蟻に擬態したクモは、擬態している蟻に化学成分を近づけているわけではなく、表皮の化学成分の濃度がかなり低いことが示された。研究の余地はまだまだあるが、蟻に擬態しているクモの視覚的な擬態と化学的な擬態は、それぞれを手がかりにする捕食者を騙すために利用されており、擬態における2つの欺瞞を示した最初の報告になると考えられる。今回の知見から、これまで「視覚的な擬態」と考えられてきたものが、実は化学的な擬態も行っている可能性を示された。

【Togetterによる簡単な研究紹介はこちら

●文献情報
Uma, D., Durkee, C., Herzner, G., & Weiss, M. (2013). Double Deception: Ant-Mimicking Spiders Elude Both Visually- and Chemically-Oriented Predators. PLoS One, 8(11), e79660.